Kさん夫妻のセルフリノベ(後編)

セルフとプロの共同作業で仕上げた
アイデア満載のリノベ実例

前回紹介(Kさん夫妻のセルフリノベ(前編)はこちら)しました、山梨県甲府市でセルフリノベを実践したKさん夫妻。鉄骨造2階建ての物件は建築事務所SHOEIのリノベ部門であるR/SHOEIによるDIYサポートシステムを利用してリノベーションを実施しています。このシステムは要所ではプロの職人による作業をお願いしつつ、多くの部分をDIYで作るというオーナーとプロの共同作業的な施工スタイルです。

前編では2階のリビングを中心にご紹介しましたが、後編の今回は1階や玄関周りなどを中心に紹介していきます。和室のリノベなど他でも実践できそうなネタも満載なのでお楽しみください。

玄関ドアのパーツ選びに加えて
玄関まわりの素材の組み合わせが見事

では早速、Kさん宅の1階部分のご紹介です。まずは玄関周りが印象的なので目が釘付けになりました。玄関ドアがとにかくおしゃれ~。それもそのはず、ドア本体は英国製のアンティークを探して購入したものなのです。そこそこ高価のものだったようですが、どこにも売っていないアンティークならではの個性的なデザインがオーナーお気に入り。カギやヒンジ類などは現代流のものに取り替えて実用的にリファインしています。

玄関を入るといきなり目の前の壁面はチョークボードペイントでフィニッシュしているのも見どころ。異空間に入り込んだムードが盛り上がります。さらに正面に見える照明はもともと玄関にあった既存の器具をそのまま再利用しているのですが、表面をアイアンペイントして雰囲気を大幅に変えています。また、靴箱の天板には、このお宅のリノベのキー素材にもなっている「モールテックス」を使って施工されています。モルタルでもコンクリートでもない、独特の質感で人のぬくもりを感じさせる素材でもあります。

ウォールペーパー選びで
部屋のイメージは激変する

和室はゲストハウスとして利用することを想定してリノベしてあります。畳は撤去してフロアパネルを敷き詰め、その上から塩ビシートを貼ってフィニッシュする手法を採用。畳敷きの部屋を違和感なくフローリングにチェンジしています。また和室然とした砂壁はスクレーパーでていねいに撤去して珪藻土を塗って仕上げています。ふすまはベニヤの板材が下地にあるタイプだったため、その上からウォールペーパーを貼っていきました。しかし、このウォールペーパーにはオーナーお二人のこだわりが満載です。複雑なヘリンボーン柄のウォールペーパーは、オランダのデザイナーである「ピート・ヘイン・イーク」がデザインした素材をチョイス。オーナー夫婦が、いろいろなウォールペーパーを探している中から見つけ出したお気に入りのデザインです。デザイナー系のウォールペーパーを使うことで部屋に強烈な個性を持たせたのがこの部屋の特徴でしょう。ふすまの周囲の木質部はチョークボードペイントで仕上げるという小技も施して、さらにウォールペーパーを引き立てています。

海外旅行者の民泊利用を考えて
野沢菜の桶を利用した風呂がアイデア

1階は将来的には民泊として利用することも考えているオーナー、海外からのお客さんも視野に入れていることから、部屋にはちょっとチャレンジングな試みも実施しています。それがお風呂です。注目なのは風呂桶で、使っているのは野沢菜の漬け物に用いる“桶”です、オーナー自らが見つけて手に入れたものです。このおけがあるだけでお風呂の雰囲気は一変、木のぬくもりを感じさせる日本ならではのお風呂というムードを作ったのです。

さらに床面は「モールテックス」で仕上げています。モールテックスは素材を専用の液剤で練って使う素材で、モルタルのように塗ることができます。1~2㎜程度の薄さで十分な強度を持っている特殊な素材で十分な柔軟性もあるのが特徴。さらに防水性もあるためお風呂の床面にも使えるのです。重ね塗りをした上でサンダーで削ると下地が出てくるのも特徴。オイル仕上げなど好みのフィニッシュを施していけば独特の風合いを出せるのも魅力の素材です。

プロ並みの完璧を求めずに
ラフに緩~く仕上げるのもDIYの特権

またセルフリノベのユーザー注目のポイントを見つけたのでリポートしておきましょう。それが廊下の壁面です。

普通にモルタルを使って仕上げてあるのですが、プロのようにコーナー部分をかっちり直線を出すのは非常に難しくハードルが高いものです。そこでオーナーはあえてラフな感じでモルタルを塗って、ゴツゴツとして風合いを出して鋭角な仕上がりを求めていません。手作り感を残した状態でフィニッシュしているのもセルフならではです。隅々までプロのように仕上げないといけないと思うことなく、臨機応変で自分ならではの仕上げをプランするのがセルフの良いところだと感じさせてくれる施工部分でした。