建築事務所とのコラボでセルフリノベ
セルフリノベのもう一つの選択肢
「DIYサポート」をセレクトする
建築施工のアマチュアである私たちがリノベーションを実施する際、技術的な面や部材選び、アイデアなど、さまざまなシーンでぶつかる壁があります。多くのユーザーはWebや雑誌などを参考に、見よう見まねでリノベ作業を実施しているのではないでしょうか。
また、少しレベルの高い作業を考えているユーザーであれば部材メーカーやDIYショップなどが実施しているワークショップに出かけて、最低限のテクニックなどを身につけてから作業に取りかかるケースもあるでしょう。
しかし、いずれも作業自体はすべてセルフであり、プロの手を借りることなく進めるスタイルです。「自分の部屋は自分で作りたい」という思いが叶えられるという面では一つの理想型ではあります。
建築事務所であるSHOEIが手がける
DIYサポートシステムに注目
そんな中「建築のプロによるセルフリノベーションのサポート」という新しい考え方を打ち出してきたのが山梨県にある建築事務所SHOEIです。社内にR/SHOEIと呼ばれるリノベ部門を立ち上げ、そこでDIYサポートシステムを実践しています。
そんなDIYサポートシステムを実践しているSHOEIの大原勝一代表にDIYサポートシステムとは何なのかを聞くために出かけました。取材当日は同社のDIYサポートシステムで完成した「KBTR Prject 完成見学会」の会場におじゃまして、実際に「オーナー達がDIY施工した部分」「プロが施工した部分」を拝見しながらお話をうかがいました。
R/SHOEIのDIYサポートシステムとはDIYできる部分はオーナーがセルフで施工し、プロに任せる部分は専門の業者が施工するという分業制を指しています。しかもDIY部分もR/SHOEIのスタッフによるサポートが受けられ、施工のアドバイス、部材選びや、デザインのアイデアまでを相談しながら作っていけるのが魅力です。
プロのサポートを受けて行う
セルフリノベの魅力を聞いた
◆DIYサポートシステム開始のきっかけは？
「私が自分でダウンステーアスと言うモデルルームをDIYで施工したんです。やりたかった施工方法や使いたかった部材を使って空間を演出したところ、独特な空間を作ることができました。それで“これはDIYが面白い”となったのです。プロが施工するだけではなくユーザー視線でDIYすることの面白さを引き出し出していくために建築事務所ができることがあるはずと、DIYサポートシステムを考えたのです」。
◆DIYサポートシステムとは何？
「R/SHOEIが考える新しい設計・施工のスタイルです。建設現場には現場監督を配置してしっかり管理した上でDIY作業をしてもらうシステムを構築しています。具体的にはDIYのアイデアや施工方法のアドバイス、さらには道具のリースや建設関連部材やパーツなどの物販をR/SHOEIが行うことでDIYをサポートしています。一般的には想像しにくいですが、リノベのために用意した大量の材料を施工するまでの間保管しておく倉庫を確保するのもDIYサポートの一環です」。
◆DIYサポートを受ける魅力は？
「大がかりなリノベーションを施工する場合、ユーザでは完成形を想像することができません。そんな場合でもプロがアドバイスをすることで安心して作業を進めることができます。また素材やパーツ選びのアドバイスもポイントです。“こんな場合には何㎜の板材を使うのか”“タイルを貼る際の下地の処理は？”などいろいろな部分で判断に迷う部分が出てきます。それを一つ一つその場で解決していけるのもDIYサポートの魅力なのではないでしょうか。またアイデア面でのサポートも重視しています。例えば部屋のイメージに合わせてアンティークの照明などを使って空間を演出したり、タイルの形状＆色柄を選んだり、アイデア豊富なプロだからこそできるアドバイスでユーザーの夢を膨らませ～現実化していくことができると思っています」。
◆プロとの共同作業のメリットは？
「電気工事などの資格が必要な施工などはすべて当社が担当します。また現場監督はDIYの工程管理もアドバイスします。例えば“今日はこの作業をここまで進めておこう”“乾燥時間を考えるとムダがない”など、DIYレベルではわからない工程をムダなく組んでアドバイスできるの経験や知恵を備えたプロならではでしょう」。
◆DIYサポートを受ける方法は？
「DIYサポートはあくまでも建築事務所とDIYを実施するオーナーの共同作業です、建設業者と施主が同じ立場になると言うことなのです。そのため通常の建築依頼するように誰もがスムーズにいくわけではありません。ポイントは会社とオーナーの相性と言えるでしょう。DIYサポートで部材選びや施工方法などをアドバイスすることになるので、オーナーと趣味や美的センスなどが共有できていることも大切です。そのため、例えば当社主催のワークショップなどに参加してもらい、その方向性や趣旨を理解してもらった上で相談していただけるとお互いにメリットがあると思います」。
◆セルフリノベの醍醐味とは？
「当然ですがセルフリノベの良いところは自分で作った意識が強いことです。そのため自分の家や部屋により強く愛着が持てるのです。しかも使い込んでいくうちに日に日にその思いが強くなっていくのもDIYしたことのメリットだと感じます。またDIY作業は自分だけでは難しいことも良いでしょう。そこで友人、知人やSNSで知り合ったセルフリノベの仲間達と作り上げることも多いのです。そんな新しい友達の輪が家作りという現場から生まれるのも魅力でしょう」。
◆セルフリノベの今後について
「セルフリノベするユーザーを見ているとプロは作らない空間を作ることができるのです。そんな可能性を広げていけるのがセルフリノベの良いところではないでしょうか。また海外ではすでに建築部材などのリサイクルが盛んに行われています。古材を利用したビンテージ住宅などのアイデアも実現できるレベルにまできています」。
セルフリノベが急速に普及を見せている近年、すべての施工をDIYでこなすのではなく、プロとの共同作業でリノベを完成させていく新たなスタイルが始動中です。今後のセルフリノベのスタンダードにもなり得る可能性を秘めたR/SHOEIの「DIYサポートシステム」、自分で作ることにこだわりつつレベルの高いセルフリノベを目標として読者なら検討してみても良い新スタイルでしょう。